読み物美々卯の風景

おいしさを守り、次へつないでいくこと。
美々卯で働く人、美々卯とともに歩む方々に、日々の仕事や仕事へのこだわりについて聞きました。
それぞれの言葉から、美々卯が大切にしてきたことを模索するコラムです。
挿絵は美大島を拠点に活躍されているミロコマチコさんに描き下ろしていただきました。

vol.01

出汁にかける思い

イラスト:ミロコマチコ

イラスト:ミロコマチコ

変わらないために変え続ける美々卯の出汁

厨房勤務(勤続年数44年)

鹿児島の高校を卒業し18歳で美々卯に入社しました。昭和57年の大阪は、空前の好景気の前でまだのんびりしていましたね。それでも、田舎から出てきた身には大都会で眩しかったです。調理どころか何も知らない未経験者でしたから、厨房でも朝から晩まで鍋を洗うくらいしか出来ません。料理担当者は昔気質の男が多く、ホールを仕切るベテランたちも早口の関西弁で、若い自分はついていくだけで必死でした。あれから44年。その間、社長は3人代替わりしましたが、皆さん、料理畑一筋の自分に目をかけてくださってほんまに感謝しています。

周りの人から、ようそんなに長い間飽きずに同じ仕事を続けていられるな、と言われることもありますが、居心地がいいんやと思います。そしてこれだけ毎日作って味見して……を繰り返しても美々卯の出汁に飽きることがない。これも私がここを離れられない理由の一つやないかと思います。おいしいんですよ、とにかく。作ってる私が言うなという話かもしれませんが、先代や先々代の社長、そして先輩方も、出汁のひき方についてはとことんこだわっていましたし、それは私らにもきっちり受け継がれています。かといって、いわゆる「レシピ」とは違うんですよ。だってね、同じ材料と調味料を分量通りにきっちり守って作っても、全然違う味になったりします。昆布を湯がく時間や温度、鍋から引き上げるタイミング、鰹節を入れる順や量はもちろん決まってますよ。でも、途中でアクを引いたり味見したり、天候や材料の産地の違いも考慮して、同じ味になるように細かく調整しているんです。美々卯の出汁はうどんすきにも蕎麦にも使う要ですから、これがブレたら話になりません。クリアな黄金色で雑味がなく、きれいな余韻が持ち味です。

最近は昆布や鰹節の生産者の方々をお訪ねして話を伺うこともあります。それでまた、出汁はすごいなぁと思うんです。初代・平太郎は、素晴らしいものを発明してくれはったなと。出汁のおいしさに胸を張れるからこそ、40年でも50年でもこれに関わっていたいと思えるのかもしれません。

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